農業用遮光ネットの選び方を徹底解説!
取り入れるメリットや種類、注意点
農業経営の規模拡大や効率化を進める中で、農業用遮光ネットは「資材コスト」として判断されがちです。しかし近年は猛暑や異常気象が常態化し、秀品率や単価の変動が経営を左右しています。適切に選定し運用すれば、遮光ネットは品質と歩留まりを守る投資になり得るでしょう。
本記事では、農業用遮光ネットを取り入れるメリットや、色別・作物別の選び方、注意点などを解説します。業務用遮光ネットの導入をお考えの方は、ぜひ参考になさってください。
本記事では、農業用遮光ネットを取り入れるメリットや、色別・作物別の選び方、注意点などを解説します。業務用遮光ネットの導入をお考えの方は、ぜひ参考になさってください。
【この記事で分かること】
●遮光ネットの選び方
●計画生産を支える遮光率や種類の考え方
農業用遮光ネットを取り入れるメリット
それぞれの具体的な内容を見ていきましょう。
◆高温障害のリスクが下がり、商品価値を維持しやすい
夏場の強い日差しは、葉焼けや果実の硬化、着色不良などの高温障害を招きます。施設園芸ではハウス内温度が外気より上昇しやすく、トマトやイチゴ、葉物類で生理障害が発生する例も少なくありません。遮光ネットで直射日光を緩和し温度上昇を抑えることで、障害リスクの軽減が期待できます。遮光率30~50%など作物に応じて調整すれば、過度な減光を避けつつ秀品率の維持につながります。品質が安定すれば単価の維持や取引先からの信頼確保にも結び付くでしょう。
◆労働環境の改善、作業効率アップにつながる
近年の酷暑は現場作業者にとって深刻な課題です。熱中症は労働災害に直結し、経営リスクとなります。遮光・遮熱効果のあるネットを設置すると体感温度が下がり、作業負担の軽減が期待できます。これは労働安全衛生法に基づく安全配慮の一環ともいえるでしょう。環境が安定すれば集中力を維持しやすくなり、収穫や選別の精度向上にもつながります。休憩や水分補給は必要ですが、安全対策を強化することで離職防止や人材確保にも効果が見込めます。
◆計画的な育苗・出荷体制を確立しやすくなる
秋冬野菜の播種期が真夏に重なる作型では、地温上昇による発芽不良や苗枯死が発生しやすくなります。レタスやキャベツは高温で発芽が抑制される性質があり、再播種は種子代や労力の増加を招きます。遮光ネットで地温の急上昇を抑えると、育苗の安定化につながります。育苗トレーや育苗ハウスでの活用は、契約出荷や市場出荷の計画精度向上につながるでしょう。遮光は温度管理の一要素ですが、環境制御を通じたリスク管理として経営判断に組み込む価値があります。
農業用遮光ネットの素材・織り方の特徴
ここからは、農業用遮光ネットの素材や織り方の特徴を解説していきます。
◆素材
遮光ネットの主原料はポリエチレン(PE)などの合成樹脂です。軽量で扱いやすく、耐水性にも優れています。ただし、織り方や編み方によって強度や形状安定性は大きく異なります。安価な製品を短期間で交換する方法もありますが、張り替え作業の労力や廃棄コストを考慮する必要があります。
特に大規模な農地では、耐久性や伸びにくさが経営効率に影響する可能性もあるでしょう。また紫外線劣化を抑えるUV加工の有無や、風荷重・積雪への耐性も確認することが重要です。ロール重量が重いほど作業負担が増すため、現場条件に応じた選択が求められます。
◆織り方
遮光ネットは織り方によって遮光性や強度、耐風性が異なります。ハウスの外張りと内張りでは求められる性能も変わります。用途や設置環境を踏まえて選ぶことが重要です。ここでは、代表的な織り方を順に見ていきましょう。
・平織
平織は縦糸と横糸を交互に交差させる基本的な構造です。目が均一なため遮光効果が安定し、摩擦にも比較的強い点が特徴です。遮光率の選択肢が広く、外張りや育苗施設など幅広い用途に対応できます。一方でカット部分がほつれる場合があります。近年は交点を熱融着した「融着平織」もあり、ほつれ防止や軽量化によって作業性が向上しています。強風地域では固定方法の工夫が必要ですが、汎用性の高い代表的な織り方といえるでしょう。
・ラッセル織
ラッセル織は、編み目を連続させる製法で作られるネットです。糸がループ状につながる構造のため、目ズレしにくく、カットしても切り口がほつれにくい特性があります。平織と比べると伸縮性が少なく、収束性、つまり使用時にたるみにくい点が特徴です。寸法安定性が求められるハウス内の可動式カーテン(スライドカーテン)との相性が良く、開閉を繰り返しても形状を保ちやすい傾向があります。巻き取り時もまとまりやすく、軽量な製品であれば作業負担の軽減にもつながります。用途に応じた選択が重要です。
・カラミ織
カラミ織は、経糸を絡ませながら織り込む製法が特徴です。糸同士が固定されるため目ズレしにくく、強度と耐久性に優れます。平織の安定性とラッセル織の扱いやすさを併せ持つ構造といえるでしょう。風圧や摩擦にさらされる環境でも形状を維持しやすく、長期展張や巻き上げ頻度の高い箇所に適しています。外張り用途で張りっ放しにする場合にも検討しやすい選択肢です。初期費用は製品によって差がありますが、長期使用によって張り替え回数を抑えられれば、トータルコストの削減が期待できます。
【色別】農業用遮光ネットの使い分け方法
◆黒色(遮光重視)
黒色ネットは光を吸収しやすく、遮光性が高い点が特徴です。直射日光を抑えたい場面で活用しやすく、価格も比較的抑えられています。耐候性が高く、汚れが目立ちにくい点も利点です。一方でネット自体が熱を持ちやすく、条件によっては輻射熱がハウス内温度に影響する場合があります。換気効率が確保できる環境や外張り用途では活用しやすいでしょう。
遮光率の選択と組み合わせることで、高温期以外の作型にも対応できます。設置方法や換気状況によって効果は変わるため、環境条件を踏まえて選定することが重要です。
◆白色(遮熱重視)
白色ネットは可視光や赤外線を反射する特性を持ちます。ネット自体の温度上昇を抑えやすく、遮熱効果が期待できます。ハウス内を明るく保てるため、光合成を維持しながら温度を調整したい場合に適しているでしょう。黒色に比べて初期費用が高くなる傾向はありますが、空調負荷の低減やピーク電力抑制につながる可能性があります。高単価作物や夏季の品質重視栽培との相性も良いでしょう。労働環境の改善にも波及効果が見込めます。設置条件によって効果は変わるため、総合的な温度管理の一環として検討することが大切です。
◆シルバー(バランス型)
シルバー系ネットは、適度な遮光性と遮熱性を併せ持つタイプです。アルミ蒸着などの加工を施した製品は反射率が高く、温度上昇抑制に効果が期待できます。遮光と遮熱のバランスを取りたい中間的な作型に向いています。汚れが目立ちにくい点も利点です。性能とコストのバランスを重視する場面で検討しやすい選択肢といえるでしょう。
◆青色(光質制御)
青色ネットは、特定波長の光を透過・制御する機能性資材です。光質は作物の形態形成に影響を与えます。製品によってはホウレンソウなどの葉物野菜で徒長を抑制する効果が報告されています。遮光だけでなく生育コントロールを目的とした活用が可能です。高付加価値作物の品質向上や単価維持を狙う戦略の一環として検討できます。ただし、効果は作物や製品によって異なります。実証データを確認しながら導入を判断することが重要です。
【作物別】農業用遮光ネットの遮光率の選び方
遮光し過ぎると光合成量が低下する可能性もあります。季節や地域差も踏まえて調整しましょう。
一般的な野菜・果菜類(トマト、キュウリ、ナスなど)
トマトやキュウリ、ナスなどの果菜類は比較的強い光を好む作物です。遮光率は30~50%程度が目安とされています。ただしこれは一律ではありません。遮光し過ぎると徒長や着果不良、収量低下につながる可能性があります。光合成量と温度抑制のバランスが重要です。真夏のピーク時のみ一時的に遮光率を上げる方法もあります。西日本の高温地域と東日本では条件も異なります。品種差も考慮しながら、作型に応じて調整することが大切です。
葉物野菜(レタス、ホウレンソウなど)
レタスやホウレンソウなどの葉物野菜では、40~60%程度が目安です。この程度の遮光率は、高温期の育苗や軟弱野菜の栽培に適しています。葉焼けや萎れを防ぎ、葉色の維持に寄与します。特に真夏は一時的に遮光を強めることで品質低下を抑えやすくなります。ただし、遮光だけで品質が向上するわけではありません。水分管理や換気と組み合わせることが重要です。収穫ロスを減らす視点で活用を検討しましょう。
陰生植物(シイタケ・ワサビなど)
シイタケやワサビなどの陰生植物は強い光を必要としません。そのため70~90%以上の高い遮光率が必要とされる場合があります。強光は生育障害や品質低下の原因になるため、林間栽培に近い環境を再現することが重要です。光環境は形状や色味などの品質に直結します。ただし高遮光率だけで十分とは限りません。通風や湿度管理との組み合わせが不可欠です。高付加価値作物であるため、安定生産が経営に与える影響も大きいといえます。
育苗期の植物
真夏の育苗では、50~70%程度の高めの遮光率を一時的に用いる場合があります。目的は地温上昇の抑制です。高温による発芽不良を防ぎ、発芽を安定させる効果が期待できます。発芽後は徐々に遮光率を下げ、健全な生育を促します。常に高遮光が必要なわけではありません。再播種が発生すると資材や人件費が増加します。出荷計画を守るためにも、育苗期の温度管理は重要です。計画生産の基盤として位置付けましょう。
高めの遮光率を使う場合でも、発芽後は苗の状態を見ながら段階的に光に慣らすことが大切です。いきなり全開にすると萎れや葉焼けにつながりやすく、逆に長く遮り続けると徒長を招きます。地温計で床面温度を確認し、暑い日は遮光、落ち着いたら開閉回数を増やす運用が現実的です。再播種の手間や種子代を抑え、作業計画を立てやすくなります。
農業用遮光ネットを使用する際の注意点
ここでは、農業用遮光ネットを使用する際の代表的な注意点を順に整理します。
かけっ放しは避ける
遮光ネットを常時張り続けると、曇天時や気温が低い日でも光量が制限され、光合成量が不足する可能性があります。光量不足は生育停滞や徒長の原因になり得ます。特に日射量の変動が大きい梅雨時期や秋口は注意が必要で、小まめな開閉管理が基本です。自動開閉装置や日射センサーと連動したシステムを活用する方法もあります。生育段階に応じて遮光を強めたり弱めたりする調整が重要です。常に外す、あるいは常に張るという固定的な運用ではなく、天候と作物の状態を見ながら判断する姿勢が求められます。
通気性を確保する
遮光ネットは網目構造により一定の通気性を持っています。しかしハウスを密閉し過ぎると内部に熱がこもることがあります。特に黒色ネットは熱を吸収しやすい傾向があるため注意が必要です。通気性があるから換気は不要、というわけではありません。サイド換気や天窓換気と併用し、風通しを確保することが重要です。十分な換気は高温障害の抑制だけでなく、病害の発生リスク低減にもつながります。外張りにすることで遮熱効果を高める工夫もありますが、施設構造や地域の気象条件によって適した方法は異なります。施設に合わせた総合的な温度管理が重要です。
ハウス内は日中に温度が上がるだけではなく、夕方以降に急に冷えて結露しやすくなります。遮光ネットで湿った空気が滞留すると、葉が乾きにくくなり、病害の呼び水になることもあります。天窓・妻面・サイドの換気を組み合わせ、風の通り道を意識しましょう。必要に応じて循環扇を併用すると、環境が安定しやすいです。
農業用遮光ネットとその他の資材の比較・使い分け方
比較する際は、単価だけで見ない方がよいです。例えば、張り替え頻度が増えると労務コストが上がります。換気が弱い資材を選ぶと、温度管理の手間が増える場合もあります。
そこで、主に次の観点で整理すると選びやすくなります。
●遮光性:必要な光量を確保できるか
●通気性:熱や湿気がこもりにくいか
●遮熱性:資材自体が熱を持ちにくいか
●耐久性:何シーズン使える想定か
●管理性:開閉、固定、巻き取りがしやすいか
この軸で見ると、遮光ネットは「通気性と管理性のバランス」が取りやすい資材です。一方、遮光シートや寒冷紗は、狙いが明確な場面で強みを発揮します。以下で、具体的に使い分けを見ていきます。
◆遮光ネットと遮光シート
遮光シートは、不織布やフィルム状で「網目がない」タイプが多い資材です。遮光率が高い製品もあり、光を強く遮りたい場面で候補になります。例えば、短期間だけ暗条件を作りたい場合や、光を避けたい工程がある場合です。ただし、網目がない分、通気性は低くなりがちです。施設内の換気が弱いと、熱や湿気が滞留しやすくなります。結果として、蒸れによる生理障害や病害リスクが上がる可能性があります。水分が抜けにくい環境では、管理負担が増える点も見逃せません。
一方、遮光ネットは網目構造を持ちます。通気性を確保しやすく、遮光しながら換気もしやすい点が特長です。ハウス外張り・内張りのどちらでも運用しやすく、日射条件に合わせて開閉する前提なら、温度と光量のバランスを取りやすくなります。
使い分けの考え方としては、次の整理が現実的です。
●完全遮光に近い条件が必要:シートが向く場合がある
●温度・湿度の管理も同時に行いたい:ネットが扱いやすい
●長期で張る、開閉運用する:ネットの方が運用設計しやすい
シートは効果が強い反面、管理の難しさが出やすい資材です。ネットは運用で調整できる余地があり、通常の施設園芸では採用しやすい選択肢になります。
◆遮光ネットと寒冷紗
寒冷紗は薄い布状の資材で、遮光率は比較的低めの製品が多い傾向があります。遮光だけではなく、防虫・防風・防寒など幅広い用途に使える点が強みです。春先や秋口など、日差しが強過ぎない時期に「軽く抑える」目的なら相性がよいでしょう。ただし、真夏の強い日差しや高温期の環境改善を主目的にする場合、寒冷紗だけでは温度上昇を抑えきれないケースがあります。作物や施設条件によっては、遮光ネットの方が遮光率の選択肢が広く、狙いに合わせて設計しやすくなります。
また、耐久性と張り替え頻度の観点も重要です。短期利用なら寒冷紗で十分な場面があります。一方、長期展張を想定すると、資材寿命や固定方法の差が作業負担に効いてきます。大規模なほど張り替えの手間が膨らむため、「作業回数の削減」が経営メリットになり得ます。
判断の目安としては、次が挙げられるでしょう。
●中間期の軽い遮光+多用途:寒冷紗が便利
●高温期の対策を主軸にしたい:遮光ネットが検討しやすい
●張り替え頻度を減らしたい:耐久性も含めて比較する
寒冷紗は「万能」ではありませんが、目的が合えば優秀です。遮光ネットも同様で、作型・季節・施設構造とセットで選ぶと、運用の納得感が出ます。
まとめ
導入前は、遮光率や色だけではなく「何年使う前提か」「張り替えに掛かる人手はどれくらいか」まで含めて試算すると判断しやすくなります。例えば同じ遮光率でも、たるみにくいネットは開閉や巻き取りの手間が減り、繁忙期の負担軽減につながります。現場で扱いやすい仕様を選ぶことが、結果的に運用の安定とコスト管理の両方に役立つでしょう。
計画生産を実現するための基盤として、自社の作型に合った製品を選ぶことが重要です。
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