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農薬を使うのは危険?
使用時のメリット・デメリットと
適切に使うためのポイントを紹介


農薬は病害虫や雑草の予防・防除に役立つ重要な農業資材ですが、一方で人体や環境への影響、抵抗性病害虫の発生といったリスクも懸念されています。そのため農業経営者の中には、農薬を使うべきか否か悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、農薬の定義や役割を解説するとともに、農薬を使用するメリット・デメリット、使用リスクを低減する方法をまとめました。農薬を使用するかどうか迷っている方や、農薬の適切な使い方を知りたい方はぜひ参考にしてください。

【この記事で分かること】

●農薬を使用すると病害虫を効率よく防除できるため、収穫量の増加や品質向上、作業負担の軽減などのメリットがある
●ただし、使い方を誤ると人体への有毒性や環境汚染、抵抗性病害虫の発生などのリスクが懸念される
●農薬を使用するときは製品ラベルを確認し、ルールを遵守して使用することが大切

農薬とは? 定義と主な役割

農薬取締法による定義では、農薬とは農作物を害する菌や線虫、ダニ、昆虫、ねずみ、草、その他の動植物またはウイルスの防除に用いられる薬剤および農作物などの生理機能の増進、抑制に用いられる薬剤のことです(※1)。具体的には以下のようなものが農薬に分類されます(※2)。

● 殺虫剤
● 殺菌剤
● 除草剤
● 殺鼠剤
● 殺ダニ剤
● 誘引剤
● 交信かく乱剤
● 発根促進剤
● 着果促進剤

なお、同法では、農作物などの病害虫を防除するための天敵、例えば寄生バチやテントウムシなども農薬の一種とされていますが、一般的には農薬といえば上記に挙げた薬剤を意味します(※2)。
農薬の主な役割は、前述したように農作物を害するものの防除や、生理機能の増進または抑制です。目的に適した農薬を使い分ければ、農業経営においてさまざまなメリットを得られます。

※1 参考:e-Gov法令検索.「農薬取締法」(2025-06-01)
※2 参考:厚生労働省.「農薬はなぜ必要か」.”p11”(参照2026-02-18)

農薬を使用するメリット

農薬を正しく使用すると、以下のようなメリットが期待できます。

安定した収穫と品質の向上

農薬を使用すると、病害虫を効率的に防除できるため、安定した収穫が望める上、農作物の品質向上も期待できます。
病害虫が繁殖すると、収量が減るだけではなく、農作物の味や見た目の質も低下してしまい、農業経営に大きなダメージを与える可能性があります。

労働負担の軽減

農業従事者の労働負担を大幅に減らせるのも大きなメリットの一つです。農薬を使わない場合、手や刈り払い機などを使って除草したり、マルチや袋かけで物理的に病害虫を防除したりする必要がありますが、手間がかかる上に、それ一つだけでは十分な効果が得られないなどのデメリットがあります。
農薬を使用すれば病害虫や雑草を効率的に防除できるため、農業従事者の負担を軽減できます。特に農業従事者が年々減少傾向にある現代日本にとって、農薬を上手に活用することは人手不足を補う有用な手段になるでしょう。

生産コストの削減

農薬を使用すれば、人力よりも大幅に短い時間で防除効果を発揮するため、人件費などの生産コストを削減できます。
農薬そのものの費用はかかりますが、防除効果の高さや手間を考えると、無農薬よりトータルコストを節約できる可能性があります。

農薬を使用するデメリット

農薬には多くのメリットがある反面、人体や環境への影響、薬剤への抵抗性などいくつかのデメリットもあります。農薬の使用を検討する際は、メリットだけではなくリスクがあることも理解した上で慎重に決定しましょう。
ここでは農薬を使用する場合に懸念されるデメリットやリスクを3つご紹介します。

人体へのリスク

栽培中に用いた農薬が土壌や農作物に残留した場合、それを食べた人体に害を与える可能性があります。
ただし、農薬が残留している農作物が人体にとって有害かどうかは摂取量によって決まります。人がその物質を毎日ずっと食べ続けても健康に悪影響がない量をADI(一日摂取許容量)といいますが、用法・用量を守って農薬を使用すれば、残留農薬の摂取量をADI(一日摂取許容量)の基準値よりはるかに低く抑えることができるため、人体に害を及ぼすリスクは少ないでしょう。(※)。
もちろん、リスクを低減するには農薬を正しく使うことが前提となるため、使用方法には十分な注意が必要です。

※参考:食品安全委員会.「食品中の残留農薬の健康影響評価について」.”p4”.https://www.fsc.go.jp/monitor/moni_24/moni24-shiryo1-1-nagoya.pdf ,(参照2026-02-18).

環境や生態系への影響

農薬は生理活性を有する物質を含んでいるため、環境中に放出すると多少なりとも自然環境や生態系に影響を及ぼすと考えられています。その影響は農薬を散布する土壌だけではなく、雨によって流れ着いた先にある川や海にも及び、水質の汚濁や水産動植物への被害が発生することが懸念されています。
近年は以前に比べると毒性や残留性の高い農薬は使用されなくなり、環境汚染の問題は減少していますが、リスクがゼロになったわけではありません。消費者にとっても環境にとっても安全な農業を行うには、農薬の適切な利用が必須です。

抵抗性病害虫の問題

抵抗性病害虫とは、農薬に対して一定の抵抗性を備えた病害虫のことです。抵抗性病害虫は、薬剤を体内に取り込んでも解毒酵素の力で分解・無毒化し、体外に排出する作用があるため、農薬による防除が難しくなります。
抵抗性病害虫は、薬剤への抵抗性が高い遺伝子を持つ個体が生存・繁殖することで増加するため、病害虫に抵抗性を持たせないための対策を講じる必要があります。

農薬を適切に使うためのポイント

農薬のデメリットを解消するには、安全面に配慮した使用方法の遵守や、抵抗性病害虫への対策が必要になります。
ここでは農薬を適切に使うために実践すべきことを3つご紹介します。

農作物や防除したい病害虫に適した農薬を選ぶ

農薬は、薬剤の種類によって効果が異なるため、使用する農作物や防除可能な病害虫に適したものを選ぶ必要があります。対象となる農作物・病害虫に合わない農薬を使うと、防除効果を期待できないだけではなく、農薬を無駄遣いする原因にもなります。
そのため、農薬を購入する際は自分が栽培している農作物および防除したい病害虫の種類に合わせて適切なものを選びましょう。病害虫を特定できない場合は、販売店などに病害虫の症状などを伝えてアドバイスをもらう方法もあります。

用法・用量を守る

農薬のラベルに記載された使用時の量、時期、回数は守りましょう。用法・用量を誤って使用すると、残留農薬が基準値を超えたり、環境汚染のリスクが高くなったりする要因となります。
特に残留農薬に関しては基準値を超えた食品の販売や輸入は食品衛生法によって禁じられています。もし違反した場合は農作物の回収や廃棄、積み戻しなどの命令が下されたり、都道府県農業部局による調査や指導が入ったりするペナルティが科せられるため、十分注意しましょう(※)。

※参考:農林水産省.「残留農薬基準等のポジティブリスト制度導入の対応について」.”p10”.https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_drift/iken_kokan/attach/pdf/h180428-3.pdf ,(参照2026-02-18).

薬剤抵抗性への対策を行う

病害虫に薬剤抵抗性を持たせないための対策として、殺虫剤の使用量を抑える、同一系統の薬剤を連続して使わないなどの工夫を取り入れましょう。
薬剤の系統については、RACコードと呼ばれる農薬の作用機構分類をチェックすれば確認できます。RACコードが異なる薬剤を複数用意し、連続使用にならないようにローテーションすれば、病害虫の薬剤抵抗性を高めるリスクを低減できるでしょう。

農薬は用法・用量を守って使用し、デメリットを解消しよう

農薬は正しく使用すれば、病害虫や雑草の防除に効果的であるため、収穫量の増加や品質の向上など多くのメリットを期待できます。ただし、用法・用量を守らずに使用すると、残留農薬による人体への影響や環境汚染などのリスクが高くなります。
また、同じ系統の農薬を使い続けると抵抗性病害虫が発生する可能性もあるため、正しい使い方や抵抗性病害虫対策を徹底することを心掛けましょう。


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