センチュウとは?
農業への被害と対策方法を解説
農業経営において害虫被害は大きな課題の一つですが、中でも経営者の悩みの種となるのが、センチュウです。センチュウは肉眼で見えにくく、防除が難しいことから、どのように対策すれば良いのか悩んでいる方も多いでしょう。
そこで本記事では、農業経営の天敵ともいえるセンチュウの基礎知識や特に注意すべき種類、具体的な駆除・対策方法について解説します。センチュウにお困りの方や、より良い対策法を探している方はぜひ最後までご覧ください。
そこで本記事では、農業経営の天敵ともいえるセンチュウの基礎知識や特に注意すべき種類、具体的な駆除・対策方法について解説します。センチュウにお困りの方や、より良い対策法を探している方はぜひ最後までご覧ください。
【この記事で分かること】
●見えないところで被害が拡大する上、肉眼で見えにくい、繁殖スピードが早いなどの特徴がある
●駆除方法には農薬・殺線虫剤の使用や熱などを用いた物理的防除、天敵を活用する生物的防除がある
センチ ュウ(線虫)とは?
そのため肉眼で見るのは難しく、知らない間に増殖し、被害が拡大していたというケースも珍しくありません。センチュウの仲間は50万種~1億種以上といわれており、その実態は未だつかめていません。雌雄の別があり、基本は有性生殖によって繁殖しますが、種によっては受精なしで繁殖する単為生殖を行うものもあります。
◆主な生息 場所
センチュウの生息場所は種によって異なります。有機物の分解物や細菌などをエサにする自活性センチュウは、エサのあるところならどこにでも存在します。山や川、海だけでなく、砂漠でも生息することが可能です。一方、動物や植物に寄生して生活する寄生性センチュウの場合、動物や植物のいる場所で生息します。農業経営において天敵となるのは寄生性センチュウの方で、農作物に寄生されるとさまざまな被害が発生します。
◆農業経営にとって脅威になる理由
センチュウが農業経営にとって脅威であるといわれる理由は大きく分けて4つあります。1.見えないところで被害が拡大する
センチュウの農作物への加害は多岐にわたりますが、その多くは根部や塊茎などが被害に遭う地下部加害です。寄生性センチュウは、頭部にある口針で作物の根に穴を開け、そこから内部に侵入して加害します。根は土壌に埋まっているため、地上から見ただけでは被害を発見しにくく、生育不良や葉枯れなどの症状が出てから初めて被害に気付くケースも少なくありません。
害虫対策は早期発見・早期対策が基本であるため、見えない部分で加害するセンチュウは農業経営者によって厄介な天敵とされています。
2.肉眼で発見しにくい
前述したように、センチュウは体長がわずか1mmほどしかなく、しかも無色透明をしているため、肉眼で発見するのは非常に困難です。そのため、発見が遅れやすく、被害の拡大につながるリスクが高いといわれています。
3.繁殖スピードが速い
センチュウは非常に繁殖スピードが早く、膨大な数に増殖します。例えば、センチュウの一種であるネコブセンチュウの場合、雌成虫は単為生殖できる上、500~60 0個もの卵を産むことで知られています。センチュウの数が増えれば増えるほど防除も難しくなるため、対策は至難の業です。なお、センチュウは乾燥に強い種や、低酸素や無酸素でも生きられる種がいることから、地球上で最も繁栄している生物の一つといわれています。土壌にはすでに大量のセンチュウが生育していると考えられるため、しっかりとした対策が必要不可欠です。
4.多種多様な加害
センチュウは畑などにおいて、多種多様な加害を引き起こすことで知られています。具体的な被害は以下の通りです。
●収穫量の減少
●品質の低下
●土壌病害の併発
ネコブセンチュウの場合、作物の根にコブが形成されるため、根の機能が著しく低下して生育不良を引き起こします。その結果、作物が正常に育たず、収穫量が少なくなったり、品質が落ちたりする原因になります。
またセンチュウと土壌病害の間に密接な関係がある点も見逃せないポイントです。
土壌病害の原因菌は、センチュウと同じように作物の根部から侵入して被害を与えるため、作物にセンチュウが寄生していると土壌病害を併発しやすいといわれています。
農業で特に注意すべき主なセンチュウの種類
● ネコブセンチュウ
● ネグサレセンチュウ
● シストセンチュウ
ここからは3種のセンチュウの生態や特徴を説明します。
◆ネコブセンチ ュウ
ネコブセンチュウとは、メロイドギネ科に属するセンチュウの総称です。土壌中を移動して作物の根に入り込むと、以後は移動せずに定着するため、内部寄生性のセンチュウに分類されます。侵入を果たした幼虫は根の内部を移動して維管束に到達した後、通常の細胞の何倍もの大きさを持つ巨大細胞を誘導し、そこから養分や水分を奪って生活します。そのため、ネコブセンチュウに寄生された作物は根の至るところにコブができるところが特徴です。
ネコブセンチュウはさまざまな植物に寄生する性質を持っていますが、中でもナス科の作物(ナスやトマト、ピーマンなど)やウリ科の作物(メロンやスイカ、キュウリなど)で被害が拡大しやすいといわれています。
ネコブセンチュウに寄生されると、作物への栄養供給が滞って茎や葉、芽といった地上部が徐々に萎れていきます。その結果、収量が大幅に低下したり、根の奇形や枝分かれといった見た目の変化が起こったりするため、農業経営にとって大打撃です。
ネコブセンチュウはさらに多数の種類に分かれますが、日本ではサツマイモネコブセンチュウ、アレナリアネコブセンチュウ、キタネコブセンチュウ が代表的な有害種として知られています。
◆ネグサ レセンチュウ
ネグサレセンチュウはプラティレンクス科に属するセンチュウの総称です。幼虫から成虫までの一生を植物の根の内外で過ごす性質があり、外から根の細胞を食べたり、根の内部に浸入して細胞を摂取したりします。前述したネコブセンチュウと同じ内部寄生性に分類されますが、根に侵入した後は同じ場所に定着して生活するネコブセンチュウとは異なり、ネグサレセンチュウは根の内外を行ったり来たりする移動性のセンチュウです。
一般的に地上部に被害が現れることは少ないといわれていますが、ネグサレセンチュウが侵入した部位からは病原菌などが侵入し、根系全体が腐敗したり、脱落したりする症状が発生するため注意が必要です。また減収には至らないものの、大根やゴボウ、人参などの根菜類において白や褐色の斑が現れたり、表面に亀裂や凸凹が生じたりするため、商品価値が低下する原因となります。
なお、ネグサレセンチュウは特定の種と作物を組み合わせたときのみ被害が拡大するという特徴があります。
例えばキタネグサレセンチュウは前述した根菜類の他、レタスやキクなどにも被害を及ぼすことで有名です。一方、ミナミネグサレセンチュウは里芋やサツマイモなどへの影響が大きく、収穫量の減少を招きます。
◆シストセン チュウ
シストセンチュウとは、雌の成虫が自らの体内に産卵し、シストと呼ばれる包嚢を形成する性質を持ったセンチュウの総称です。センチュウの中には乾燥に弱い種もいますが、シストセンチュウはシストを形成することで乾燥など過酷な環境にも長期間耐えられるところが特徴です。シストセンチュウに寄生された植物は多核質細胞を形成させられ、根から養分や水分を奪われてしまいます。その結果、作物に十分な栄養や水分が行きわたらなくなり、
生育不良や黄化症状、地上部の萎れなどの深刻な被害が発生します。
日本産のシストセンチュウはさほど種類が多くありませんが、特に要注意とされているのがジャガイモシストセンチュウやダイズシストセンチュウです。名前の通り、ジャガイモシストセンチュウは馬鈴薯(じゃがいも)、ダイズシストセンチュウは大豆や小豆などの豆類にしかそれぞれ寄生しないという特徴があります。寄生された場合の被害は甚大で、発生密度が高い場合、減収率は50~60% にも及ぶといわれています。
センチュウの駆除・対策方法
●農薬・殺線虫剤の使用
●物理的防除
●生物的防除
ここからはそれぞれの駆除方法について詳しく解説します。
◆農薬・殺線虫 剤の使用
農薬や殺線虫剤を散布してセンチュウを駆除する方法です。センチュウ対策に用いる薬剤は多数ありますが、使用する期間や対策するセンチュウの種類によって有効な薬剤が異なるため、あらかじめ注意しましょう。以下では代表的な農薬・殺線虫剤をまとめました。
定植・播種の一定期間前に使用
●D-D剤
●クロルピクリン燻蒸剤
●クロルピクリン・D-D燻蒸剤
●ダゾメット粉粒剤(バスアミド微粒剤 など)
定植・播種前、または生育期に使用
●ホスチアゼート液剤(ガードホープ液剤 など)
●ホスチアゼート粒剤(ネマトリンエース粒剤 など)
●メソミル水和剤
●DCIP粒剤
●イミシアホス粒剤(ネマキック粒剤 など)
●オキサミル粒剤(ネマトリンエース粒剤 など)
種子、種イモ処理および地上部寄生性センチュウに使用
●カルタップ水和剤(パダンSG水溶剤 など)
⇒イネシンガレセンチュウ・ネグサレセンチュウ など
農薬や殺線虫剤を用いた駆除方法はセンチュウ対策の基本とされており、適切に使用すればセンチュウの被害を食い止められます。ただし、薬剤の中には有害なセンチュウだけでなく、土壌にとって有用な生物を駆除してしまうものも少なくありません。
特に、燻蒸剤タイプはバクテリアやカビなども駆除してしまうため、土壌環境への影響が懸念されています。一方、液剤や粒剤はバクテリアやカビなどには影響を与えないため、環境に負担をかける心配はありません。ただし、繰り返し使用すると薬剤の効き目が低下していく不効化が生じるリスクがあります。
さらに粒剤の場合、過剰に使用すると土壌中に残った薬剤が作物に残留する可能性が高くなるといわれています。そのため、農薬や殺線虫剤を使う際は用法や用量、そしてリスクを考えながら慎重に使うことを心掛けましょう。
◆物理的防除
物理的防除とは、土壌をセンチュウの生存に適さない環境にして駆除する方法のことです。物理的防除にはさまざまな種類がありますが、ここでは代表的なものを4つご紹介します。1.太陽熱消毒
夏場の高温を利用して土壌消毒を行う方法です。夏季の休作期にビニールなどで土壌表面を覆い、土中を高温の状態に維持することで、熱に弱いセンチュウを死滅させられます。この方法はセンチュウだけでなく、雑草対策にも有効で、夏場の除草の手間を削減できるという副次的な効果も期待できます。猛暑の日本ならではの防除法ですが、冷夏になった年は効果が落ちる可能性があるため注意が必要です。
2.熱水消毒
熱水消毒とは、70℃~95℃ の熱水をまくことで地温を上昇させ、センチュウを死滅させる方法です。前述した太陽熱消毒に比べると天候に左右されないため、厳冬期以外はいつでも駆除できる点と、深部にまで効果が及ぶところが大きな特徴です。ただし、熱水消毒を行うには専用の消毒機や熱水注入装置が必要になります。
3.蒸気消毒< /h4>
蒸気消毒とは、ボイラーから発生させた蒸気を土壌中に放出させることによってセンチュウを駆除する方法です。前述した熱水消毒の場合、大量の水を散布するぶん、乾燥までに数日を要しますが、蒸気消毒の場合はその必要がなく、地温が常温に戻ればすぐに定植できます。
また傾斜地でも均一に浸透させられることから、場所にかかわらず処理できるのも大きな強みです。さらに肥効が良くなるというメリットもありますが、濃度障害が出るリスクがあります。
4.湛水
湛水とは、農地を一年間水田にすることでセンチュウを駆除する方法です。長期にわたって低酸素・無酸素状態にすると、有害なセンチュウはほぼいなくなるといわれています。なお、湛水は土壌還元消毒法との併用によって、さらに短期間で効果を引き出せます。
土壌還元消毒法とは、ふすまや米ぬかなどを大量にすき込むことで一時的に湛水する方法です。これを高温の夏場に行うと、熱による消毒効果も相まって、センチュウの密度を大幅に低下することが期待されます。
◆生物的 防除
生物的防除とは、センチュウの天敵となる生物を利用して防除する方法です。ここでいう天敵とは、センチュウを捕食する昆虫や寄生虫、微生物などのことで、これらを農地に利用してセンチュウの防除を行います。
農薬や殺線虫剤などに比べると効き目が現れるまでにやや時間がかかりますが、自然界に存在する生物を利用しているため、環境に負担をかけないところが大きな利点です。
中でも微生物の働きを利用する微生物資材を用いた方法は、センチュウの防除だけでなく、土壌改良にも役立ちます。具体的に期待できる効果は以下の通りです。
●養分の吸収率向上
●病害虫の抑制
●団粒構造の形成促進
微生物には土壌中の有機物を分解し、作物が吸収しやすい形にするという作用があります。肥料を無駄なく活用できるため、作物の生育改善だけでなく、コストの削減も期待できるところが利点です。
また微生物が正常に活動する土壌は、団粒構造の形成が促進されやすくなります。
団粒構造が形成されると土壌中の通気性や保水性がアップするため、作物が健全に育ちやすい環境を整備することができます。さらに、微生物はセンチュウだけでなく、他の病害虫の増殖を抑制する働きも確認されており、さまざまなリスク低減にも効果的です。
センチュウ対策をしっかり行い、安定した農業経営を目指しましょう
気付いたときにはセンチュウ被害が拡大していたというケースも少なくないため、センチュウによる被害が見つかったら迅速かつ適切な手段で駆除することが大切です。
センチュウ対策にはさまざまな方法がありますが、中には農地に何らかの影響を及ぼすリスクがあるものも少なくありません。そのため、センチュウ対策を行う際は即効性だけでなく、環境への負担や維持コストなどを総合的に評価し、駆除・対策方法を選ぶことをおすすめします。
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AG土力はセンチュウを捕食する菌類や繊維分解菌を添加した菌資材の一種です。土壌センチュウに対して有効に作用するのはもちろん、微生物の活性化によって連作障害を防止するなど、作物の健全育成を促進する効果も期待できます。農薬ではなく土壌改良材であるため、環境に負担をかけずにセンチュウ対策ができます。
「センチュウに困っている」「なるべく負荷をかけない対策を考えたい」という方は、ぜひAG土力の利用をご検討ください。


